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不思議な手紙

原作・作画
 
つげ義春
初出
『迷路4』若木書房 1959年2月
 
頁数
15頁 短編

登場人物



犬丸
主人公 母の墓が二つあることを不思議な手紙によって知らされる。

友人
犬丸の友人。墓参り途中に出会う。

沼田
火葬場の窯の中で遺体より金目のものを漁っている途中、一緒に焼かれ死ぬ。

東 義(ヨッさん)
不思議な手紙の差出人。沼田を焼殺する。


あらすじ

母の墓参りに訪れた犬丸は友人に出会う。 きみの母さんの墓は谷中では?? と問う友人に今日届いた不思議な手紙について話す。

手紙の主は火葬場の窯たきで通称ヨッさん。
当時、沼田という同僚がおり、彼は死人の窯に入っては金目のものをくすねていた。ヨッさんの注意も聞く素振り無し。 ある日、火葬場に犬丸の母の遺体が運ばれてくる。その火葬中に窯を漁っていた沼田が生きたまま焼けていることに気づくヨッさん。ヨッさんは「死ね」と叫びながら更に窯に炭を・・・。
焼けた骨を半分取り、犬丸に渡した。
そういうわけで宝福寺に後の半分は眠っているとのこと。
そして、犬丸に対しては罪を感じるが、沼田を殺したことは悪いという意識が無いとのヨッさんの告白。

犬丸と友人は不思議な手紙について話し合いながら寺をあとにする。

考察

「不思議な手紙」はつげ義春先生の作品の中でも初期の作品に位置し、多く見受けられる作風である「生活感、エロチシズム、妙に内面的な世界観や、私小説的な要素は見受けられない。幾分、読みやすい作品で、しかも気に入った作品を。というわけで、今回この作品を取り上げることにした。

この作品は、犬丸の今いる時間と、その頁数の多くを占めるヨッさんの手紙の内容のシーンを間に挟んだストーリー構成となっている。 結局のところ、沼田をそのまま焼き殺したヨッさんの告白により、人間の本質とは何なのかを犬丸達に考えさせる処にこの物語の中核はあるのであるが、実際の処、何故にヨッさんはそのよなことをするに至ったのか?
ヨッさん自身が沼田に対して嫌悪感を持っていたのは事実。彼はバチが当たったんだと繰り返す。焼香の最中に窯を焚き始めたことから起こった事故であるが、そういう状態の中で普段抱いていた嫌悪感と一瞬の殺意が合い交えて殺してしまった。

手紙を読むにつけても他人の死に対しての人間の感情について、非常に冷静に捉えている。そして、沼田の死を冷ややかに語り、尚且つ沼田に対しては罪を感じず、犬丸に対しては罪を感じると言っている。ヨッさんは既にバチが当たったとことに片付けて自分の殺人罪を転嫁している処が興味深い。罪悪感の感じない殺人ほど、残虐性の秘めたものはないかもしれない。

余談ではあるが、(前にもどこかで書いたような気がするが)人間の子供は妙な残虐性を持っている。それと似てはしまいか?罪悪感を感じないということこそ残虐なのである。

実際犬丸自身、このヨッさんの告白により知った、母の火葬がそういう形に行われたことに対する怒りが一切書かれていないことにも注意したい。他人の死に対して意外と人間は無頓着な処があるのは否めない。例えばヤッさんは死期が迫って初めてこのことを告白する。要するに自分が死と向き合ってはじめて。また、犬丸のように肉親であっても年月が過ぎた頃には既にその頃の悲しい感情は平温に戻っているのである。もちろん、そうでなくてはいけないのであるが、そういった普通の人間の死に対する思いというものを考えさせられる。

結局のところ、人間の瞬間の残虐性についてこのストーリーは語っており、最後に犬丸とその友人が呟いているように「人間って複雑」「本当のことはわからん」というのがこのストーリーの本当のところであると思うが、ヤッさんのこの矛盾した気持ちをどう解くか?の問いかけは、犬丸と同じくして読者にも向けられており、読者それそれにいろんな考え方を持って読まれる所が文学の面白いところだとふと思った。

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